アトピーの人の特徴として、これまで 「免疫のバランスが崩れている」 「炎症が続きやすい」 という2点を詳しくお伝えしましたが、 もう一つ重要なポイントとして、 「皮膚のバリア機能が弱い」 ということが挙げられます。
皮膚が自前で作る天然のバリア
人間の皮膚は、大きく分けて3層構造になっていて、表面から順に「表皮」「真皮」「皮下組織」と呼ばれます。今回は主に「表皮」について書きます。
化粧品のCMなどでもよく見かけると思いますが、「表皮」はレンガを積み上げたような構造をしています。レンガの一つ一つは細胞です。真皮に近い、奥の方のレンガは生きている細胞ですが、新陳代謝で表面に上がってくるにつれ
ちなみに角質層の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。爪や髪の毛も同じ「ケラチン」から出来ていると言うと驚く方もいらっしゃるでしょうか。同じ成分でできているのにずいぶんと触り心地が違うもんだと、不思議に思い
表皮のレンガとレンガの隙間には「皮脂」や皮膚が作り出す「天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)」がしみわたっていて、表皮の表面も皮脂に覆われています。この皮脂やNMFの働きは大きく二つ。
水分の無駄な蒸発を防ぐ
皮膚にはある程度の水分が保たれていないと、とてももろくなってしまいます。適度な水分を保つためには、必要以上に皮膚から蒸発していかないように、蓋をしなければなりません。皮脂やNMFはそ
外からの細菌や有害物質やアレルギー物質から肌を守る
皮膚はカラダのもっとも外側にあって、外界からの刺激をもっとも多く受ける器官です。その刺激の中には、細菌やウイルスやアレルギー物質など肌にとって有害なものもあ
このように、皮脂やNMFは 「皮膚のバリア」というとても重要な役割を担っているんですね。
NMFを作るのが苦手な体質
NMFってあまり聴きなじみのない方もおられるかもしれませんね。NMFの中で最も有名なのはヒアルロン酸でしょうか。1滴のヒアルロン酸で何リットルもの水を抱え込むことができるという強力な保湿の成分で、最近では多く
ところが、アトピーの人の多くは、遺伝的に皮脂やNMFを作る力が弱いことが知られ
そして、実はアトピーの人にとって、 「刺激物が肌に直接触れる」というのが非常に厄介な問題なのです。
刺激物の攻撃⇒アトピースパイラル
空気中には目に見えないようなホコリや花粉など、アレルギー物質になりうる物質がたくさん舞っています。花粉の時期なんて 1立方センチメートル当り1000個以上もの花粉が飛ぶのです。そういったアレルギー物質が皮膚に触れ
そうすると、皮膚のすぐ下辺りで待ち構えていたIgEが反応して、アレルギーを起こします。そして、IgEが発した信号によって皮膚に炎症が起こり、赤みや強い痒みを引き起こし、皮膚が傷んでしまいます。普段の食生活によっ
「乾燥敏感肌」
⇒アレルギー物質の侵入
⇒IgEが反応
⇒炎症が起こる+炎症が治まりにくい体質
⇒痒い⇒掻く
⇒皮膚ボロボロ+「乾燥敏感肌」
⇒アレルギー物質の侵入
⇒…
というサイクルです。これが延々と続くためにアトピーは治りにくいのです。
僕はこれを「アトピースパイラル」と呼び、このスパイラルを止めることがアトピーから抜け出すということだと考えています。
保湿による“時間稼ぎ”で皮膚の再生力を取り戻す
では、どうすればこのスパイラルを止められるのでしょうか?
それには、失われたバリアを張りなおすしかありません。でも、自分では作れない状態なので、外から借りてくるしかありません。それがいわゆる「保湿」です。
皮膚の表面に仮のバリアを張っておけば、当面は刺激物の攻撃・侵入を防ぐことができます。そうすればIgEが反応せず、炎症も治まる方向に向かいます(オメガ3脂肪酸を摂っていることが前提ですが)。そうすると、皮膚は再生力を取り戻します。
実は、炎症でボロボロになった皮膚は、常に傷を修復しようと、必死に新陳代謝を行って新しい皮膚を生産し続けています。でも、結局アトピースパイラルの勢いに押されて、修復が間に合わないので、いつまでたってもボロボロの皮
ところが、保湿によってスパイラルの速度が緩やかになると、皮膚の修復力が上回って、皮膚が元の姿に戻り始めます。皮膚が再生できるようになってくるのです。そうすることによって、 ある程度時間はかかるかもしれませんが、最終的には皮膚本来の働き=「バリアを作る力」を取り戻すことができるのです。
つまり、保湿はアトピースパイラルを一時的にストップさせて、皮膚の修復を行うための「時間稼ぎ」なんだということですね。
保湿は回数勝負
しかし、アトピーの「乾燥敏感肌」レベルを甘く見てはいけません。どれだけしっかり保湿しても、2~3時間もすればカッピカピに乾燥してしまうのです。どれだけ保湿力の高い製品を使ったとしてもそうなります。 僕自身、かなり
そうすると結局、職場ついてから就寝前に保湿するまで、バリアの無い状態で過ごすことになってしまいます。これでは、まったく時間稼ぎの意味がありません。
ではどうするか?
実は、アトピーの人の保湿に大切なのは、「製品の保湿力」ではなく「回数」なんです。「乾燥したな…」と感じたらすぐに化粧水+乳液やクリームで保湿。できれば時間を決めて、一日に何度も。僕の場合は、「出勤前」「出勤直
こうすれば一日のうち、 ほとんどの時間をバリアに守られた状態で過ごすことができ、 皮膚が再生する時間は十分に確保できます。 とにかく、こまめに保湿です!
※もちろん「製品の保湿力」も大切です。 ぜひ良い製品に出会ってください。
皮膚の再生に必要な栄養素“タンパク質”
毎日こまめな努力によってしっかり時間稼ぎをしたら、皮膚は少しずつ再生されていきます。しかし、皮膚を再生するためには、皮膚の材料が必要ですよね。その材料とは「タンパク質」です。
実は、アトピーの人はとにかくタンパク質不足に陥りやすいんです。「乾燥敏感肌」がエスカレートしていくと、毎日ものすごい量の皮膚がはがれおちていきます。僕も経験がありますが、フローリングの床が舞い落ちた皮膚で真っ
ということは、タンパク質をたくさん摂らないと、せっかく保湿によってアトピースパイラルが緩まっても、新しい健全な皮膚を作れないという結果になってしまいます。
なので、食事でしっかりタンパク質を摂るようにしましょう。卵アレルギーがなければ卵をたくさん食べましょう。青魚はタンパク質に加えてオメガ3脂肪酸も同時に摂れるので 一石二鳥ですね。それでも足りないので、サプリメントの力を借りることも大切です。タンパク質を補うためのサプリメントと言えば、いわゆる「プロテイン」ですね。
タンパク質が十分摂れていれば、皮膚の再生は加速度的に進みます。
皮脂が出た日
アトピーが全身に広がってからの数年間、僕の皮膚は皮脂というものを分泌したことがありませんでした。いつもカサカサでつっぱっていて、ちょっとした刺激にも弱く、すぐ痒くなりました。それでも学んできた方法を信じて、地道に保湿とタンパク質補給を繰り返しました。
そしてあるとき、鏡を見ると小鼻のあたりにテカリが見えました。それは皮脂でした。自分で作った皮脂。僕の皮膚の遺伝子はまだ自分の仕事を忘れてはいませんでした。その瞬間がアトピーからの脱出を目指す生活の中で 一番うれしかった瞬間かもしれません。事実、そこからの改善はとても速かったように思います。
こまめに保湿をするとか、食事に気を付けるとか、面倒臭くて我慢のいる生活を続けるのは正直嫌でしたが、これは報われる努力でした。本当にアトピーから抜け出したいのであれば、自分の置かれた状況に向き合って、コツコツとやっ
アトピー改善アドバイザー
桒野靖士(くわのやすし)
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- 第3の側面:乾燥肌・敏感肌
- 第4の側面:腸内環境
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- 第6の側面:メンタル
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