出版のお知らせ

2018年11月に初の書籍が出版されました!

皮膚のバリアを取り戻せ!

 

アトピーの人の特徴として、これまで 「免疫のバランスが崩れている」 「炎症が続きやすい」 という2点を詳しくお伝えしましたが、 もう一つ重要なポイントとして、 「皮膚のバリア機能が弱い」 ということが挙げられます。

 

皮膚が自前で作る天然のバリア

 

人間の皮膚は、大きく分けて3層構造になっていて、表面から順に「表皮」「真皮」「皮下組織」と呼ばれます。今回は主に「表皮」について書きます。

化粧品のCMなどでもよく見かけると思いますが、「表皮」はレンガを積み上げたような構造をしています。レンガの一つ一つは細胞です。真皮に近い、奥の方のレンガは生きている細胞ですが、新陳代謝で表面に上がってくるにつれて、細胞は活動しなくなり、最も表面の角質層は死んだ細胞でできています。

ちなみに角質層の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。爪や髪の毛も同じ「ケラチン」から出来ていると言うと驚く方もいらっしゃるでしょうか。同じ成分でできているのにずいぶんと触り心地が違うもんだと、不思議に思いますよね。タンパク質というのは変幻自在の生命の材料なんです。…と、タンパク質について書き始めるとキリがないので話を元に戻しましょう。

表皮のレンガとレンガの隙間には「皮脂」や皮膚が作り出す「天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)」がしみわたっていて、表皮の表面も皮脂に覆われています。この皮脂やNMFの働きは大きく二つ。

 

水分の無駄な蒸発を防ぐ

皮膚にはある程度の水分が保たれていないと、とてももろくなってしまいます。適度な水分を保つためには、必要以上に皮膚から蒸発していかないように、蓋をしなければなりません。皮脂やNMFはその蓋の役割を担っています。

 

外からの細菌や有害物質やアレルギー物質から肌を守る

皮膚はカラダのもっとも外側にあって、外界からの刺激をもっとも多く受ける器官です。その刺激の中には、細菌やウイルスやアレルギー物質など肌にとって有害なものもあります。皮脂やNMFはそういった有害な刺激物が皮膚に直接触れないように、また皮膚から体内に入り込まないように防御しています。

 

このように、皮脂やNMFは 「皮膚のバリア」というとても重要な役割を担っているんですね。

 

NMFを作るのが苦手な体質

 

NMFってあまり聴きなじみのない方もおられるかもしれませんね。NMFの中で最も有名なのはヒアルロン酸でしょうか。1滴のヒアルロン酸で何リットルもの水を抱え込むことができるという強力な保湿の成分で、最近では多くの化粧水や美容液に配合されていますよね。他にも尿素やセラミド、クエン酸など様々なNMFがチームワークで皮膚を乾燥や刺激から守っています。

ところが、アトピーの人の多くは、遺伝的に皮脂やNMFを作る力が弱いことが知られています。特に「セラミド」というNMFを作るのを苦手とする傾向にあるようです。こういう肌は、上記2つの機能が十分に果たせないため、水分は過剰に蒸発していき、刺激物は直接肌に触れます。いわゆる「乾燥肌」「敏感肌」です。面倒なのでここでは「乾燥敏感肌」と呼びますね。アトピーの人はほとんどもれなく「乾燥敏感肌」の傾向を持っているのです。

そして、実はアトピーの人にとって、 「刺激物が肌に直接触れる」というのが非常に厄介な問題なのです。

 

刺激物の攻撃⇒アトピースパイラル

 

空気中には目に見えないようなホコリや花粉など、アレルギー物質になりうる物質がたくさん舞っています。花粉の時期なんて 1立方センチメートル当り1000個以上もの花粉が飛ぶのです。そういったアレルギー物質が皮膚に触れたとき、皮脂やNMFが不足した「乾燥敏感肌」の場合は皮膚の隙間から、体内へググッと入ってきてしまうのです。

そうすると、皮膚のすぐ下辺りで待ち構えていたIgEが反応して、アレルギーを起こします。そして、IgEが発した信号によって皮膚に炎症が起こり、赤みや強い痒みを引き起こし、皮膚が傷んでしまいます。普段の食生活によって、炎症が治まりにくい体質になっているので、なかなか炎症が治まりません。痒いのでボリボリと掻いてしまいます。そうするとさらに皮膚の表面は荒れ地のようになり、アレルギー物質の通り道を広げることになります。そうするとさらにアレルギー物質がたくさん入り込むようになり、IgEは盛んにアレルギー信号を発します。そしたら炎症が起こり…という風にアトピーのスパイラルへと突入していくのです。

「乾燥敏感肌」

⇒アレルギー物質の侵入

⇒IgEが反応

⇒炎症が起こる+炎症が治まりにくい体質

⇒痒い⇒掻く

⇒皮膚ボロボロ+「乾燥敏感肌」

⇒アレルギー物質の侵入

⇒…

というサイクルです。これが延々と続くためにアトピーは治りにくいのです。

僕はこれを「アトピースパイラル」と呼び、このスパイラルを止めることがアトピーから抜け出すということだと考えています。

 

保湿による“時間稼ぎ”で皮膚の再生力を取り戻す

 

では、どうすればこのスパイラルを止められるのでしょうか?

それには、失われたバリアを張りなおすしかありません。でも、自分では作れない状態なので、外から借りてくるしかありません。それがいわゆる「保湿」です。

皮膚の表面に仮のバリアを張っておけば、当面は刺激物の攻撃・侵入を防ぐことができます。そうすればIgEが反応せず、炎症も治まる方向に向かいます(オメガ3脂肪酸を摂っていることが前提ですが)。そうすると、皮膚は再生力を取り戻します。

実は、炎症でボロボロになった皮膚は、常に傷を修復しようと、必死に新陳代謝を行って新しい皮膚を生産し続けています。でも、結局アトピースパイラルの勢いに押されて、修復が間に合わないので、いつまでたってもボロボロの皮膚のままなんですね。

ところが、保湿によってスパイラルの速度が緩やかになると、皮膚の修復力が上回って、皮膚が元の姿に戻り始めます。皮膚が再生できるようになってくるのです。そうすることによって、 ある程度時間はかかるかもしれませんが、最終的には皮膚本来の働き=「バリアを作る力」を取り戻すことができるのです。

つまり、保湿はアトピースパイラルを一時的にストップさせて、皮膚の修復を行うための「時間稼ぎ」なんだということですね。

 

保湿は回数勝負

 

しかし、アトピーの「乾燥敏感肌」レベルを甘く見てはいけません。どれだけしっかり保湿しても、2~3時間もすればカッピカピに乾燥してしまうのです。どれだけ保湿力の高い製品を使ったとしてもそうなります。 僕自身、かなり保湿力の高い製品を選んで使っていましたが、それでも朝どれだけしっかり保湿したところで職場に着いたころにはカッピカピでした。

そうすると結局、職場ついてから就寝前に保湿するまで、バリアの無い状態で過ごすことになってしまいます。これでは、まったく時間稼ぎの意味がありません。

ではどうするか?

実は、アトピーの人の保湿に大切なのは、「製品の保湿力」ではなく「回数」なんです。「乾燥したな…」と感じたらすぐに化粧水+乳液やクリームで保湿。できれば時間を決めて、一日に何度も。僕の場合は、「出勤前」「出勤直後」「昼休み」「3時」「帰宅前」「就寝前」のように、一日に5~6回やっていました。

こうすれば一日のうち、 ほとんどの時間をバリアに守られた状態で過ごすことができ、 皮膚が再生する時間は十分に確保できます。 とにかく、こまめに保湿です!

※もちろん「製品の保湿力」も大切です。  ぜひ良い製品に出会ってください。

 

皮膚の再生に必要な栄養素“タンパク質”

 

毎日こまめな努力によってしっかり時間稼ぎをしたら、皮膚は少しずつ再生されていきます。しかし、皮膚を再生するためには、皮膚の材料が必要ですよね。その材料とは「タンパク質」です。

実は、アトピーの人はとにかくタンパク質不足に陥りやすいんです。「乾燥敏感肌」がエスカレートしていくと、毎日ものすごい量の皮膚がはがれおちていきます。僕も経験がありますが、フローリングの床が舞い落ちた皮膚で真っ白に覆われしまうくらいです。仕事中も30分おきに机の上に落ちた皮膚を集めてゴミ箱に捨てていました。肩にはいつも頭皮が乾燥してフケとして落ちていました。それはタンパク質が体から剥れ落ちていっているのと同じです。おそらくアトピーの人は健康な皮膚の人に比べて、何倍ものスピードで新陳代謝し、何倍ものスピードでタンパク質を消費しているはずです。

ということは、タンパク質をたくさん摂らないと、せっかく保湿によってアトピースパイラルが緩まっても、新しい健全な皮膚を作れないという結果になってしまいます。

なので、食事でしっかりタンパク質を摂るようにしましょう。卵アレルギーがなければ卵をたくさん食べましょう。青魚はタンパク質に加えてオメガ3脂肪酸も同時に摂れるので 一石二鳥ですね。それでも足りないので、サプリメントの力を借りることも大切です。タンパク質を補うためのサプリメントと言えば、いわゆる「プロテイン」ですね。

タンパク質が十分摂れていれば、皮膚の再生は加速度的に進みます。

 

皮脂が出た日

 

アトピーが全身に広がってからの数年間、僕の皮膚は皮脂というものを分泌したことがありませんでした。いつもカサカサでつっぱっていて、ちょっとした刺激にも弱く、すぐ痒くなりました。それでも学んできた方法を信じて、地道に保湿とタンパク質補給を繰り返しました。

そしてあるとき、鏡を見ると小鼻のあたりにテカリが見えました。それは皮脂でした。自分で作った皮脂。僕の皮膚の遺伝子はまだ自分の仕事を忘れてはいませんでした。その瞬間がアトピーからの脱出を目指す生活の中で 一番うれしかった瞬間かもしれません。事実、そこからの改善はとても速かったように思います。

こまめに保湿をするとか、食事に気を付けるとか、面倒臭くて我慢のいる生活を続けるのは正直嫌でしたが、これは報われる努力でした。本当にアトピーから抜け出したいのであれば、自分の置かれた状況に向き合って、コツコツとやってみるのもいいんじゃないでしょうか。アトピーを治せる人がいるとしたら、医者でも家族でも恋人でもなく、それは自分自身だけなんだと思います。

 

 

 

 

アトピー改善アドバイザー

桒野靖士(くわのやすし)

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

1980年生まれ、大分県出身。 大阪大学卒業後、大手メーカーに経営企画スタッフとして勤務。 入社の数ヶ月後からアトピー性皮膚炎を発症。 2年間ステロイドを使うが改善が見られなかったため、25歳のとき脱ステを決意。 激しいリバウンドの最中に出会った分子栄養学に可能性を感じ、ほぼ独学で学ぶ。 3年間の試行錯誤の末、アトピーの症状はすべて消えた。 しかしその後、ココロの不安定さから人間関係やお金の問題に悩むこと更に3年。 仕事を転々とし、最後は1年間の無職無収入を経験。 自分を変えたいと心理学や感情について独学で学ぶ中で、1冊の本をきっかけに社会復帰。 自分にできることは何かを考えた末、アトピーの体験・知識を伝えることを決意。 アトピー改善アドバイザーとして全国で講演やカウンセリングを行い、「アトピーを味わい尽くすと、人生が変わる」というメッセージを伝えている。